こんにちは、花農家の山田です。私は長年、花の栽培と品種改良に取り組んできました。美しい花を育てることは私の情熱ですが、同時に、育てた花を適切な価格で販売し、経営を安定させることも重要な課題です。
花の販売戦略を考える上で、市場動向と消費者ニーズの把握は欠かせません。今日は、私自身の経験も交えながら、花卉市場の現状、消費者ニーズの多様化、販売チャネルの選択、差別化戦略、ブランディングなどについて、詳しく解説していきたいと思います。
この記事が、花農家の皆さんにとって、販売戦略を考える上での一助となれば幸いです。それでは、まず花卉市場の現状と動向から見ていきましょう。
花卉市場の現状と動向
国内花卉市場の規模と推移
国内の花卉市場は、長期的には縮小傾向にあります。農林水産省の統計によると、2019年の花卉類の販売金額は、4,120億円でした。これは、ピーク時の1990年代と比べると、約3割減少しています。
ただし、近年は市場規模の縮小に歯止めがかかりつつあります。2015年から2019年にかけては、ほぼ横ばいで推移しています。
輸入花卉の動向と影響
国内市場の縮小に伴い、輸入花卉の存在感が増しています。特に、東南アジア諸国からの輸入が増加傾向にあります。
輸入花卉は、価格面で国内産と競合するため、国内生産者にとっては脅威となっています。一方で、輸入花卉の増加は、消費者の選択肢を広げ、花卉全体の消費拡大にもつながっています。
新型コロナウイルス感染症の影響
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で、花卉市場は大きな打撃を受けました。イベントの中止や外出自粛により、需要が大幅に減少したためです。
私の農園でも、2020年春の売上は前年比で半減しました。ただし、巣ごもり需要の高まりにより、家庭用の花や鉢物の販売は比較的堅調でした。
消費者ニーズの多様化
季節や用途に合わせた花の需要
消費者のニーズは多様化しています。季節ごとの需要や、用途に合わせた需要が見られます。
例えば、母の日やバレンタインデーなどのイベント時期には、ギフト用の花の需要が高まります。また、結婚式やお葬式など、冠婚葬祭用の花も重要な需要先です。
環境意識の高まりとエコフラワーの需要
近年、環境意識の高まりから、エコフラワーの需要が増えています。エコフラワーとは、環境に配慮した方法で栽培された花のことです。
具体的には、化学肥料や農薬の使用を減らした花や、地産地消の花などが、エコフラワーとして注目されています。私の農園でも、減農薬栽培の花を販売し、好評をいただいています。
フラワーギフト市場の動向
フラワーギフト市場は、花卉市場の中でも重要な位置を占めています。特に、インターネットの普及により、オンラインでのフラワーギフトの販売が伸びています。
オンラインフラワーギフトは、利便性が高く、若い世代を中心に人気があります。私も、オンラインショップを開設し、フラワーギフトの販売に力を入れています。
販売チャネルの選択と強化
直売所やfarmers marketの活用
販売チャネルの選択は、花農家にとって重要な戦略の一つです。私は、直売所やfarmers marketを積極的に活用しています。
直売所では、消費者と直接対話ができるため、ニーズの把握や固定客の獲得につながります。また、farmers marketは、地産地消を求める消費者とのつながりを築く場として効果的です。
オンライン販売の強化
先ほども触れましたが、オンライン販売の強化は不可欠です。自社のオンラインショップだけでなく、花卉専門のECサイトへの出店も検討するべきでしょう。
オンライン販売では、商品の見せ方や発送方法など、工夫が必要です。私は、花の写真撮影にこだわり、丁寧な梱包を心がけています。
法人向け販売の開拓
法人向け販売は、安定した売上を確保する上で重要です。オフィスや店舗への定期的な花の納入や、ウェディング会場との契約などが、法人向け販売の例です。
私は、地元のレストランと契約し、テーブル花を定期的に納入しています。法人向けの販売開拓には、積極的な営業活動が必要不可欠です。
差別化戦略の重要性
オリジナル品種の開発と販売
差別化戦略は、競合他社との競争に勝ち抜くための鍵です。その一つが、オリジナル品種の開発と販売です。
私は、バラの新品種開発に力を入れています。オリジナル品種は、希少性が高く、高単価での販売が可能です。また、品種登録を行うことで、知的財産としても保護されます。
ストーリー性のある商品づくり
花に物語を持たせることも、差別化につながります。例えば、特別な意味を持つ花言葉や、花にまつわるエピソードを商品に付加することで、付加価値を高めることができます。
私は、「祖母の思い出のバラ」という商品を開発しました。祖母が大切にしていたバラの品種を復活させ、そのストーリーを商品に込めることで、多くのお客様に共感していただけました。
付加価値の高いフラワーアレンジメントの提供
フラワーアレンジメントも、差別化の有効な手段です。単に花を売るのではなく、アレンジメントという付加価値を提供することで、高単価での販売が可能になります。
私は、フラワーアレンジメントのワークショップを開催し、お客様に花の楽しみ方を提案しています。アレンジメントの技術を磨くことで、差別化を図っています。
ブランディングと情報発信
農園ブランドの確立
ブランディングは、差別化戦略と表裏一体です。農園のブランドイメージを確立することで、商品の付加価値を高めることができます。
私は、「山田ローズ」というブランド名で、農園のバラを販売しています。品質の高さと独自性を前面に打ち出すことで、ブランドイメージの定着を図っています。
SNSを活用した情報発信
ブランディングには、情報発信が欠かせません。特に、SNSの活用は効果的です。
私は、農園のInstagramアカウントを開設し、日々の栽培の様子や新商品の情報を発信しています。花の美しい写真を投稿することで、フォロワーとのエンゲージメントを高めています。
イベントやワークショップの開催
イベントやワークショップの開催も、ブランディングに役立ちます。お客様との直接的なつながりを築くことができ、農園のファンを増やすことができます。
私は、年に数回、農園で収穫祭を開催しています。花の摘み取り体験や、アレンジメントのワークショップなどを行い、お客様に農園の魅力を体感していただいています。
まとめ
以上、花の販売戦略について、市場動向と消費者ニーズの把握を中心に解説してきました。重要なポイントをまとめると、以下のようになります。
- 国内花卉市場は縮小傾向にあるが、横ばいで推移している
- 輸入花卉の増加や新型コロナウイルスの影響など、市場環境の変化に注意が必要
- 消費者ニーズは多様化しており、季節や用途に合わせた提案が重要
- 直売所やオンライン販売など、販売チャネルの選択と強化が必要
- オリジナル品種の開発やストーリー性のある商品づくりなど、差別化戦略が鍵
- 農園ブランドの確立とSNSでの情報発信、イベントの開催などが効果的
花農家にとって、販売戦略は経営の根幹を成すものです。市場動向と消費者ニーズを的確に把握し、それに応じた戦略を立てることが求められます。
私自身、試行錯誤の連続ですが、常にお客様の声に耳を傾け、新たな挑戦を続けています。皆さんも、自園の強みを生かした販売戦略を追求していきましょう。
花は人々の暮らしに彩りと潤いをもたらします。その花を育て、お客様にお届けすることは、私たち花農家の誇りであり、使命です。市場の変化に柔軟に対応しながら、求められる花を提供し続けることが、私たちの役目だと思っています。
これからも、花農家の皆さんと切磋琢磨しながら、日本の花卉産業の発展に貢献していきたいと思います。共に、花と人を結ぶ架け橋となりましょう。